本が濡れてしまったとき、冷凍を利用して乾燥させる方法があることをご存じでしょうか?一見、意外な方法に思えるかもしれませんが、水分を急速に凍らせることで本を傷めにくいと考えられています。
しかし、間違ったやり方をすると、ページが固まったり、シワになったりと逆効果になることも。今回は、濡れた本を冷凍する際に失敗する原因と、成功するための正しいやり方を詳しく解説します。
冷凍で濡れた本を乾かす方法とは?

本が濡れたとき、すぐに乾かそうとしてドライヤーを使ったり、直射日光で乾燥させたりすると、本が変形してしまう可能性があります。冷凍はそうしたリスクを抑えるための方法の一つですが、正しい手順で行わないと逆に失敗してしまうこともあります。
冷凍のメリットとデメリット
メリット
- 急速冷凍することで、紙の繊維に含まれる水分を凍結させ、ゆっくり蒸発させることができる
- カビの発生を防ぐことができる
- インクのにじみを抑える可能性がある
- 冷凍中に細菌の繁殖を防ぎ、衛生的に乾燥させることができる
- 本の内部まで均一に冷却し、乾燥のムラを減らせる
- 他の乾燥方法よりも短時間で済むため、早急に対処したい場合に有効
デメリット
- 凍結したまま放置すると、紙の質感が変化しやすい
- 解凍方法を間違えると、ページが貼りついたりシワができたりする
- すべての本に適しているわけではない(古い本や特殊な紙の本は冷凍に向かない)
- 冷凍中の湿度管理が不適切だと、紙がさらにダメージを受ける可能性がある
- 解凍時に誤った方法をとると、冷凍庫内の霜が本に付着してしまうリスクがある
- 凍らせる前に適切な準備をしないと、紙が折れたり、破れたりすることがある
冷凍庫での乾燥の基本的なやり方
- 本の表面の水分を軽く拭き取る
- できるだけ水分を取り除いておくと、氷の粒ができにくくなる
- ペーパータオルや柔らかい布を使って優しく押さえるようにして拭く
- 余分な水分が残ると冷凍時に氷の結晶ができ、本の構造を損なう可能性がある
- 本をジップロックに入れる
- 乾燥中に余計な水分が移らないように密閉する
- 可能であれば、ジップロックの中にシリカゲルを入れて湿気を吸収させる
- 密封する際に、できるだけ空気を抜いておくことで霜の発生を防ぐ
- 冷凍庫に入れて急速冷凍する
- なるべく本を平らにして入れるのが理想
- 冷凍庫内で重い物の下敷きにならないように注意する
- 急速冷凍機能がある場合は活用し、短時間で凍結させることがポイント
- 数時間から数日間冷凍する
- 完全に凍らせることで、カビの発生を防ぐ
- 厚みのある本ほど冷凍時間を長くする必要がある
- 定期的に確認し、凍結状態をチェックすることで適切な乾燥を促す
- 冷凍庫から取り出し、ゆっくり乾燥させる
- 直射日光や高温を避け、室温で解凍していく
- 解凍後、本が波打つのを防ぐために、間に吸水紙を挟んで重しをのせる
- 必要に応じて、除湿機の近くでゆっくり水分を抜くことで変形を防ぐ
- 解凍後すぐにページを開こうとせず、紙が安定するまで待つ
濡れた本を冷凍する際の適切な時間
冷凍時間は本の厚みによって異なります。
- 薄い本(数十ページ程度) … 4~6時間
- 標準的な本(200ページ程度) … 12~24時間
- 分厚い本(辞書や全集) … 48時間以上
長期間冷凍しすぎると、紙が脆くなってしまうため、適切な時間内に処理することが大切です。
なぜ冷凍で失敗するのか?

冷凍を利用すれば本のダメージを抑えられると言われていますが、実際には失敗してしまうケースも多いです。失敗の主な原因を見ていきましょう。
冷凍での乾燥がうまくいかない原因
- 冷凍前に水分を十分に取り除いていない
- 多くの水分が残った状態で冷凍すると、本の繊維の間に氷ができてしまい、紙が膨張してしまう
- 冷凍中に氷が本の繊維を破壊し、ページが固くなったり、紙質が劣化することがある
- 適切な前処理として、ペーパータオルで軽く押さえながら水分を取り除き、数時間陰干しするのが有効
- 冷凍する際に圧力がかかってしまう
- 他の食品の重みで圧迫されると、本の形が崩れる
- 冷凍中の重みで紙が圧縮され、解凍時にシワが深く刻まれる可能性がある
- 本を冷凍する際は、空間を確保し、平らな状態を維持するために硬い板などで挟むのが理想的
- 解凍の際に急激に温める
- ドライヤーなどで急激に解凍すると、紙が波打つ原因になる
- 急速に水分が蒸発すると、紙が縮んで変形し、場合によってはインクがにじむ可能性がある
- 室温でゆっくり解凍し、適宜吸水紙を挟んで少しずつ水分を抜くことで、変形を最小限に抑えることができる
- 除湿機や扇風機を使い、自然に乾燥させることも効果的
失敗しやすい冷凍のやり方とは?
- ジップロックなしでそのまま冷凍する → 乾燥中に余計な湿気を吸収しやすい
- 冷凍庫内で長時間放置する → 凍結焼けが起こり、紙がパリパリになる
- 解凍後すぐに開こうとする → ページがくっついて破れる可能性がある
冷凍後に紙が固まる・変形する理由
紙は水を含むと膨張し、乾燥すると収縮します。冷凍でうまく乾燥させたつもりでも、解凍後に急激に乾燥すると紙が変形し、波打ったり固まったりするのです。
冷凍で失敗したときのリカバリー方法

失敗したときにまずやるべきこと
- 本が固まっている場合は、無理に開かずに室温で自然解凍させる。
- 乾いたタオルを挟んで、軽く重石を乗せて形を整える。
- 解凍時に湿度の低い環境を作るため、除湿機や乾燥剤を活用する。
- 冷凍によりページがくっついてしまった場合は、ページの間にクッキングシートを挟み、時間をかけて少しずつ開く。
濡れた紙が残った場合の対処法
- ページ間に吸水紙を挟み、ゆっくりと水分を取る。
- 風通しの良い場所で陰干しする。
- ページごとにティッシュペーパーを挟み、軽く押さえながら吸水させる。
- 湿気がこもらないように、本の下にすのこやワイヤーラックを敷き、空気の通り道を作る。
- 適度にページを開いて、均等に空気が触れるように工夫する。
冷凍で乾燥できなかったときの別の方法
- 新聞紙で挟んで圧をかけながら乾燥
- 新聞紙は吸水性が高く、圧をかけることで紙のシワや歪みを抑えながら乾燥できる。
- 毎日新聞紙を取り替えながら、数日かけてゆっくり乾かす。
- シリカゲルと一緒に密閉して吸湿乾燥
- シリカゲルをジップロックや密閉容器に入れて、本を乾燥させる。
- 乾燥剤を定期的に交換し、完全に水分を抜くまで時間をかける。
- 本が完全に乾くまで密封状態を維持する。
- 扇風機の風を当ててゆっくり乾燥
- 直接風を当てるのではなく、弱めの風を遠くから当ててじっくり乾かす。
- 扇風機の風向きを定期的に変えながら、ムラなく乾燥させる。
- 部屋の空気を循環させることで、湿気がこもるのを防ぐ。
- アイロンを活用した復元方法
- 低温のアイロンを当てながら、タオルやクッキングペーパーを間に挟んで水分を飛ばす。
- 強く押し当てすぎないようにし、様子を見ながら慎重に作業する。
- アイロンを使う際は、焦がさないように温度設定を低めにする。
- 重しを活用して乾燥と形の維持を両立
- 乾燥後に本が歪まないよう、重しを使って形を整える。
- 厚手の本や雑誌を上に乗せ、均等に圧力をかける。
- 長期間重しを乗せることで、ページの波打ちを最小限に抑える。
これらの方法を組み合わせることで、冷凍に失敗した本でも、できる限り元の状態に近づけることが可能になります。
まとめ
濡れた本を冷凍することで乾燥させることは可能ですが、間違った方法で行うと逆効果になることがあります。特に、冷凍前の準備や解凍の手順を誤ると、ページが貼りついたり、シワができたりと、本のダメージが大きくなる可能性があります。
冷凍を行う前には、水分をしっかり拭き取り、適切な環境を整えることが重要です。また、ジップロックに入れて湿気を遮断し、冷凍中の圧力がかからないように注意しましょう。
さらに、冷凍後の解凍方法も慎重に行い、直射日光や急激な加熱を避け、自然な状態で乾燥させることが大切です。
失敗した場合でも、アイロンや吸湿紙を活用したリカバリー方法があり、完全に元に戻すことが可能なケースもあります。適切な処置を行うことで、濡れた本をできるだけ元の状態に近づけることができます。
本を大切にするためには、普段から湿気対策を行い、万が一濡れた場合も慌てず、正しい方法で対処することが求められます。この記事で紹介した正しい方法を実践し、大切な本を長く使えるようにしましょう。